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「ぽ。」

 夏の枯死体を眺めていた。春や秋、冬に亡骸は無いけれど、何故か唯一、夏だけは、死にゆく季節である。様々な夏の死骸を見てきた。前回見たのは溺死して醜く膨れ上がっていて、少し臭った。

 夏は何度も死ぬけれど、その都度生き返っているわけではなくて。彼らは決してゾンビではない。

 言葉にも又、死体がある。置き去りにされた叙情は、街の片隅、青くぼんやり薄らぐ幽霊のように佇んでいる。自ら宿主を探すこともなく、置き去りにされた事も分からないままに、呼吸を繰り返す。

 夏はゾンビではなく、言葉も又、ゾンビではない。