2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ア、秋7

思い出は焼香のよう、空に溶ければまだ様になるのだろうか ポエムだろうが思想の吐瀉だろうが、煙草の灰がほろりと解けて落涙のように見えるのならば、それで、好い。七夕の夜に織姫と彦星が会えないことを共に悲しみ涙して、そうして降る雨の事を洒涙雨と云…

バタイユの「マダム・エドワルダ」に撃ち抜かれ、膝から崩れ落ちた、日曜日、うねる思想と沈む思想、どうにもやり場のない恍惚感

ア、秋6

朧げな思い出をほどきながら、連作10首もしくは11首をようやく書けた。どう纏めるか随分時間がかかったけれど、なにか一つ、これだ、というものが出来ると、一気に形の輪郭が見えてきて、光のようなものまで見えてきた気持ちになって、そこに這ってゆけ…

とある飲み屋、とある言葉

「きみの短歌に出てくる、君って、結局はきみからみた誰かなんだろう? つまりそれは、きみ自身の事を言っているに過ぎないんだよ」 「僕の短歌、と、僕だけの短歌、その区別を考えていかなきゃ、きっと先はないんじゃないかな」

ア、秋5

千種創一歌集「千夜曳獏」を何度も何度も読んでいる。 余りの嫉妬に、書き溜めていた短歌全てを破いて、捨てた、苦しい。身が捩れるほどの、これほどの寂寥と嫉妬を覚えたのは、太宰治「駆込み訴え」を初めて読んだ、あの夜以来で、身の置き所が見つからない…

生活をせねば短歌は作れぬとようやく知った遅すぎる秋、習慣に宿る輝く十字星傷つけたとて晴れない視界

ア、秋4

全てが夢のように遠く、薄らいでいる。 このまま何も起きなければいい。何も起きず何も終わらず、産まれることもなく、熱に浮いたかのようにぼやけていればいい。 いつかは悪夢で目が醒める。 目が醒めた時、どちらが悪夢か、区別がつけば良いのだが。

ア、秋3

ブロンは28錠。84錠を三日で割ると28錠だから。他に意味はない。 恋人間の性行為には値段をつけられないのだと大真面目に考える、マジョリティ。所詮、口約束でしかない関係に、プライスレスも何も、あるか。滅ぶべき価値観が、繁栄をもたらすそれである皮肉…

白昼の街に君と二人で居なかった事。熱に浮くような悪夢に塗られた夜々には必ず君と居れた事。不在と非在の隔別が、とうとう僕らを追放してしまった事。胃の軋みが唯一ひとつの、身分証明書となり得た事。 ジヒドロコデインリン酸に夢を見たとて現実は揺蕩う…

9/4

天使。創生。喪失。銀河鉄道。 白紙のままの、スケッチブック。 雨は降り続ける。 卵。産まれる、或は産まれない。多世界線。 空高く北星の十字架。頬を痛めつける滝の様、雨は煌びやか。澱む足元水面と成り果て、君が好き。 雲間。螢火。 夢を見ていた。

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「ぽ。」 夏の枯死体を眺めていた。春や秋、冬に亡骸は無いけれど、何故か唯一、夏だけは、死にゆく季節である。様々な夏の死骸を見てきた。前回見たのは溺死して醜く膨れ上がっていて、少し臭った。 夏は何度も死ぬけれど、その都度生き返っているわけでは…

ア、秋2

凍傷。余りに暑い。 蹲り見下す空の流星群 青々と茂る残夏の枯れ死体 空回る車輪が映す走馬灯 殻無くし落涙溶ける虚蝉の 鴨。子持ち昆布。歩き疲れる。酷く空虚。

思い出す事の出来ぬ、忘れさられた〈事象〉が、(例え、忘れてしまった事実さへ記憶から抜け落ちてしまっていたとして、)『存在していない』とは言えない様に、例えば手首に宿るリストカット痕、当初とは全く異なる様相を以てして残りつづけている様な〈事…