思い出す事の出来ぬ、忘れさられた〈事象〉が、(例え、忘れてしまった事実さへ記憶から抜け落ちてしまっていたとして、)『存在していない』とは言えない様に、例えば手首に宿るリストカット痕、当初とは全く異なる様相を以てして残りつづけている様な〈事象〉が、その変化がまるで呪いかの様な理由となり果て、『存在している』とは言えない、とも考えられる。

 

 どちらに於いても、鉤括弧の位置は正しくなく、あくまで『言えない』に目を向けるべきであり、ぼくらが何かを断言できるものが有るとしたら、それは「断言できる可能性は無い」

 

 又、《不在の存在》と《存在の不在》には、その点に於いて、差異が孕まれており、前者が恋しい問題、後者が切実な問題、なのだろう。

 

緑色ニ火照ル雨夜ノ反射月雑踏肉声失語遠景

 

 等。