wack


背中が遠のく、濃淡の鈴の音、歩みつづける、夢を見るたび、これは夢と知らされる。

夜が来る、暗闇にも夜がある
音がする、夢が壊れてゆくような
背中が遠のき、足が逆さに廻りつづけ仮面の女、背中越しでそうわかる
多分、笑っている、そんな音ばかりが耳につく。

足音に反響はなく、背中を追う、右手のランプは遠のいて、
右手を伸ばす、届く訳がないだろう。苦しくて、苦しくて、
君の足場が水中なのだと知らされる、砂が。

歩きつづける、左手を伸ばす。泡に触れ、四季を見つめていた。

いつまでも出口につかず、あたりがきっと暗くなる、転調、波のさざめき、

呼吸。泡に消え、息ができない、何も思い出せない。出口のない洞窟、の中、と夢の中
水中、蜘蛛が笑って、猫を、怒りを。
浮上する性的倒錯、味を失した二十五年の檸檬の後悔よ

水たまり、見つめる少女の
平面の、
存在、屋根のない家が
泡と、煙と海に沈んだ、白跡の
歩きつづけた、止まること、沈みゆく都市にて
背中が遠く、届かずに。
ランプばかりが目にいたい

少女の涙が水たまりを揺らして
等価値の痛み、不燃の月日にはきっと
インクがにじむ、にじむ
空を
愛を

燃やした紙幣