冬火3

 東北の辺鄙な場所にてアイドルが歌っていた。

 歓楽街の外れ、酔っ払いやキャバ嬢やホストしか居ない場所で、アイドルが歌って踊って、美しかった。

 普段なら来ないであろう土地に、彼女を応援すべく、少々野暮ったい男たちが集まって、サイリウムを振っていて、私はそのサイリウムの虹色には、この瞬間、この歓楽街のネオン等、遥かに凌駕する美しさが宿っていると思い、泣いてしまった。

 私は口惜しかったのだ。一生涯で一度でも誰かを涙させるほどの光りを発せられる彼女や彼らが羨ましくて、そうして、また、泣いてしまった。