淋しさは池袋 6/18

本棚に眠っていた、井伏鱒二の『山椒魚』にふと目が向いて、二年ぶりに開いた。くらくらした。深く深く、心に雪が積もったかのように、なにかずしりとした感触が残った。誰かと話したくて仕方がなかった。どうにも落ち着かずに、シャワーを浴びて散歩に出かけ、それでも降り続ける言葉の重さに耐えきれず、スペースを開いた。人は、来なかった。淋しさでたちまち雪は溶け、ぼくは全身が水の底にあるかのような、暗渠に放り出されたかのような、そんな心地で、金曜日の池袋の雑踏からは浮いていた。