人と会話をした日には、なんであんな話題を選んだのだろう。だとか、なんであの場面でもっと気の利いた言葉を卸せなかったのだろう。だとか、あの質問にはこう答えるのが本心なのに何故。だとか、話すとつまらない人間であることがばれてしまうからもう口は開かないようにしよう。だとか、夜中くらくらしてしまい、Kindleに顔を照らされるばかりで映る画面は透過してその先の天井ばかりを見つめてしまう。

 最近特に顕著なのだが、どれだけ走ろうが、もしくは立ち止まって通り過ぎるのを待とうが、淋しい、といった或る走者に追いつかれてしまう。彼らは決して通り過ぎて行ったり、振り放されたりせずに、僕の背中をきっと睨みつけてはじわじわとその間隔を詰めてくる。時にはチェーンソーを鳴らして。時には忍足で。それは彼らの気分次第で決まるのだろう。

 寂寥とは決して一過性のものなんかではなく、一度その目に留まってしまえばいつまでもいつまでも、終りのない追いかけっこに興じる事を義務付けられる。途中、休憩があったとして、その間に僕がどれだけ遠くへ走り去ったとしても、ゲームが終わる事はない。彼らが死んでしまわない限りは。もしくは、私自身が。

 その上、彼らはどことなく、影に似ている。