朝日。割れたガラス、膝を擦り剥き、手の平からは血が滲んで滴っている。

「すごくどうでもいいことなんて、やっぱり、ないよ」

「僕ら、ずっと上手に生きられないね」

「カエルが鳴くから帰ろうか」

彼女の帰りを待っている。

明日、明日から。

死に体の劣等感やラブホテルのネオン看板に晒されたあの夜も全部、全部伏線であったなら、どれだけ僕ら救われるのだろう。

飼育1

朝起きたら蚰蜒が一匹死んでいた。

アンモニア、余程生きたかったのか、口は静止の綺麗な遺骸。

梅雨を待たずに死にゆく蚯蚓

干からびた街並みの片隅に、こびりついて、剥がれない、ペンキの青み。

白む空、ちらちらと、言葉が遠く。

蜈蚣に喰わせれば済む話し。

雨漏り1

雨音を聴きながらタバコを吸ってああ今日も働けないやって寝不足でがなる頭の中でぐるぐると過去の行いへの贖罪なんかしてみたりしてあと二箱しかタバコ買えないし缶チューハイだってもうなくなるしそんな浅薄な憂うつ

星1

 ぱちん。星が一つ、二つ、多分、三つ。雨降りの夕闇の匂い、ペトリコール。

「近頃は僕、お酒ばかり。」

 そうしてまた、

「ショウヒセヨ。ショウヒセヨ。」

 言葉が浮かばなくなって、久しい。こうして途切れ途切れ、連ねてみるも酷く、酷く虚しい。

「酔っ払うと可愛いね。」

 手の震え、浮いた肝臓、涙が落ちなくなってどれ程が経ったろう。雨降りの夜に鯨が泳ぐ、なんて言わないで。夜空に鯨が泳ぐから雨が降るんでしょう?

 愛の価値も金の価値も移ろう理であるならば、僕らは何に縋れば良いのだろう。

 あといつまで、いつまで、縋れば良いのだろう。