2021-01-01から1年間の記事一覧

冬火3

蛍 東北の辺鄙な場所にてアイドルが歌っていた。 歓楽街の外れ、酔っ払いやキャバ嬢やホストしか居ない場所で、アイドルが歌って踊って、美しかった。 普段なら来ないであろう土地に、彼女を応援すべく、少々野暮ったい男たちが集まって、サイリウムを振って…

冬火2

ラバーソウル、先天性末端恐怖症、母の日に贈らないままの花枯れた、瞬く間もなく笑える星々、サブスク解約スペース方法の検索欄、目玉焼き、ババコンガが傘をさして歩いてる、猫の手でメルボルンをカルテット、嫌儲、さらば青春の光

wack

背中が遠のく、濃淡の鈴の音、歩みつづける、夢を見るたび、これは夢と知らされる。 夜が来る、暗闇にも夜がある音がする、夢が壊れてゆくような背中が遠のき、足が逆さに廻りつづけ仮面の女、背中越しでそうわかる多分、笑っている、そんな音ばかりが耳につ…

冬火1

思いもよらず知らぬ内に神とやらを殺してしまったとして彼は罰せられるのだろうか。

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「そういえば明日、泣いていたけど、なんだったの」 猫に名前を付けた。ソマリと。彼の毛並みは薄汚れていたけれど、黒猫であったから、結局のところ汚れていなかった可能性もある。 「純潔だって、いつかは黄ばんでしまうのよ。だから泣くの」 彼女はまた、…

ア、秋11

希死念慮には空腹が付き纏い、憂うつには感涙が満ち満ちる、視野の搾りかすとして映るそれは、さながら熱病患者や夢遊病患者のような、浮沈を繰り返す人々に覆われた街。 蛇に食された猫の亡骸は骨だって不在したままに、結局のところ何だったんだろうね、な…

何かを食し、そうして何かを排泄して、一生を遂げた。それだけのこと、それだけのこと、悲しいけれど、それだけのこと。

ア、秋8

例え、幾百年過ぎ去ろうが街を燃やす恨みや意志、希望だけは手放してはいけない。 意図して、アラームでもかけておき、定期的に思い出すこと

10/6

「欲しいもの思い付く才能が欲しい」と、大森靖子は歌った。 そうだよな、と思う他には何も書きようが無く、でも、書いておかずに忘れてしまうのは嫌だから。 手が悴んでいる。冬の気配。 「いつまでも、成長しないで、」フグの毒、テトロドトキシンと言うら…

孤独を覚えた人間は読書に耽ると言うけれど、絶望にも似た断絶的な孤独の前に於て、僕らはただ白痴の如く、しらじらの夜を歩き渡る他には、何も出来なくなってしまう。

10/5

柳田国男『妖怪談義』を読み始めた。 単語「君」に囚われている事をセカイ系、感傷マゾというジャンルに浸かりきっていると言えるか、どうか。 僕の感覚で言えば、僕自身の不在から来る、君への「僕の実存」の委託、に近くて。 つまりそれは、暴力でしかなく…

ポエジー

一冊の本や、一枚のアルバム、一目で惹かれる人間等、瞬間に、雨降りの夜に燻るような価値観を燃やし尽くす炎はあり得て、僕にとってのそれが、ショーペンハウアーの哲学であったり、amazarashiの爆弾の作り方であったりしただけの事。 ショーペンハウアーは…

〜のよう、 〜みたい、 で始まる短歌の限界さ。面白くなさ。

10/1

今ではもう、水槽のエアーポンプ音は聞こえない。この部屋にはもう、何もない。何かがあってはいけないと思う。ただ痛みだけがあるべきな、そんな部屋。

ア、秋7

思い出は焼香のよう、空に溶ければまだ様になるのだろうか ポエムだろうが思想の吐瀉だろうが、煙草の灰がほろりと解けて落涙のように見えるのならば、それで、好い。七夕の夜に織姫と彦星が会えないことを共に悲しみ涙して、そうして降る雨の事を洒涙雨と云…

バタイユの「マダム・エドワルダ」に撃ち抜かれ、膝から崩れ落ちた、日曜日、うねる思想と沈む思想、どうにもやり場のない恍惚感

ア、秋6

朧げな思い出をほどきながら、連作10首もしくは11首をようやく書けた。どう纏めるか随分時間がかかったけれど、なにか一つ、これだ、というものが出来ると、一気に形の輪郭が見えてきて、光のようなものまで見えてきた気持ちになって、そこに這ってゆけ…

とある飲み屋、とある言葉

「きみの短歌に出てくる、君って、結局はきみからみた誰かなんだろう? つまりそれは、きみ自身の事を言っているに過ぎないんだよ」 「僕の短歌、と、僕だけの短歌、その区別を考えていかなきゃ、きっと先はないんじゃないかな」

ア、秋5

千種創一歌集「千夜曳獏」を何度も何度も読んでいる。 余りの嫉妬に、書き溜めていた短歌全てを破いて、捨てた、苦しい。身が捩れるほどの、これほどの寂寥と嫉妬を覚えたのは、太宰治「駆込み訴え」を初めて読んだ、あの夜以来で、身の置き所が見つからない…

生活をせねば短歌は作れぬとようやく知った遅すぎる秋、習慣に宿る輝く十字星傷つけたとて晴れない視界

ア、秋4

全てが夢のように遠く、薄らいでいる。 このまま何も起きなければいい。何も起きず何も終わらず、産まれることもなく、熱に浮いたかのようにぼやけていればいい。 いつかは悪夢で目が醒める。 目が醒めた時、どちらが悪夢か、区別がつけば良いのだが。

ア、秋3

ブロンは28錠。84錠を三日で割ると28錠だから。他に意味はない。 恋人間の性行為には値段をつけられないのだと大真面目に考える、マジョリティ。所詮、口約束でしかない関係に、プライスレスも何も、あるか。滅ぶべき価値観が、繁栄をもたらすそれである皮肉…

白昼の街に君と二人で居なかった事。熱に浮くような悪夢に塗られた夜々には必ず君と居れた事。不在と非在の隔別が、とうとう僕らを追放してしまった事。胃の軋みが唯一ひとつの、身分証明書となり得た事。 ジヒドロコデインリン酸に夢を見たとて現実は揺蕩う…

9/4

天使。創生。喪失。銀河鉄道。 白紙のままの、スケッチブック。 雨は降り続ける。 卵。産まれる、或は産まれない。多世界線。 空高く北星の十字架。頬を痛めつける滝の様、雨は煌びやか。澱む足元水面と成り果て、君が好き。 雲間。螢火。 夢を見ていた。

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「ぽ。」 夏の枯死体を眺めていた。春や秋、冬に亡骸は無いけれど、何故か唯一、夏だけは、死にゆく季節である。様々な夏の死骸を見てきた。前回見たのは溺死して醜く膨れ上がっていて、少し臭った。 夏は何度も死ぬけれど、その都度生き返っているわけでは…

ア、秋2

凍傷。余りに暑い。 蹲り見下す空の流星群 青々と茂る残夏の枯れ死体 空回る車輪が映す走馬灯 殻無くし落涙溶ける虚蝉の 鴨。子持ち昆布。歩き疲れる。酷く空虚。

思い出す事の出来ぬ、忘れさられた〈事象〉が、(例え、忘れてしまった事実さへ記憶から抜け落ちてしまっていたとして、)『存在していない』とは言えない様に、例えば手首に宿るリストカット痕、当初とは全く異なる様相を以てして残りつづけている様な〈事…

ア、秋1

花が散る夢を見ていた午前四時揺らぐ雲間の速さを知らず 潔癖症故に己が身削り取り君で満たした七文字を捨つ さまざま。 シャッターの降りきった、繁華街横道の、確かな栄えの名残りを感じ、暗闇の中に寂しさはあまり見当たらず。 梅の花が落ちていた。亡霊…

夜な夜な酒を飲み歩く白痴みたいなものだから、素面の頭で捉える街はどうしようもなく淋しく見える。

膿まず身体

胃がキリキリと軋むから 昨晩は猫が瓦礫となりました 遠くに鼠が走り去る 倒置構文に神は宿らず。 菫が揺れて風が後から吹き出した 胃がキリキリと軋みそう 今晩も猫は瓦礫となりつつあり ジヒドロコデイン欠乏症 儚いね、儚いね 眼球には海があります 海に…